メタマテリアルから成るマイクロストリップアンテナを考えます。([9] Chapter19)
メタマテリアルアンテナ
文献[9]のChapter19からChapter23まではメタマテリアルを使用したアンテナです。
すべて誘電体基板を使用していますが、
OpenMOMは誘電体の計算ができないためにそのままでは計算できません。
そこで以下のようなスケール則を利用して計算することを考えます。
OpenMOMは曲線や曲面の計算に適しており、計算時間も一般に短いので、
OpenFDTDで誘電体基板付きのモデルを計算するための予備的な計算を行うことができます。
誘電体を考えないときのスケール則
スケール則としてはいくつかの方法が考えられますが、
ここでは線路の特性インピーダンスを変えないスケール則を考えます。
(1) 単線メタラインアンテナ
図1にアンテナ形状を示します。
線路の-X端を給電し、+X端を抵抗(80Ω)で終端します。
線路は周期構造をなし、周期pの中の二つのギャップをCでつなぎ、
中央の一つのビアをグラウンド板に接続してその途中にLを直列に接続します。
上記ツールにεr=2.6,W=2.0mm,H=1.6mm
を代入するとZ0=79.033Ω、εr,eff=2.0667となります。
従ってスケール因子K=1.438です。
スケール後の基板厚さはH'=2.30mm、線路幅はW'=5.64mmです。
左手系と右手系の境界になる周波数を推移(transition)周波数fTと呼びます。
ここではfT=3GHzとなるようにパラメーターを設定しています。
図2に反射係数を示します。推移周波数付近は遮断周波数となっています。
図3に各周波数でのXZ面の放射パターンを示します。文献[9]のFigure19.6と似ています。
推移周波数以下では後退波により後方に放射し、推移周波数以上では前進波により前方に放射します。
図4,図5に左手系と右手系の周波数におけるEz成分の位相分布を示します。
左はY=0mm,Z=20mmの線上、右はZ=20mmの面上の分布図です。
左の位相(赤線)から左手系では傾きが正、右手系では傾きが負であることがわかります。
右の図からも同じことがわかります。
図1 アンテナ形状 (図の使い方は4.4参照)
図2 反射係数 (2-5GHz. Z0=80Ω)
![]() (a) 2.3GHz |
![]() (b) 2.6GHz |
![]() (c) 2.9GHz |
![]() (d) 3.2GHz |
![]() (e) 3.5GHz |
![]() (f) 3.8GHz |
図3 放射パターン (XZ面) | |
![]() (a) 振幅・位相の線上分布 |
![]() (b) 位相の面上分布 |
図4 左手系での電界分布 (2.3GHz, Ez成分, Z=20mm面) | |
![]() (a) 振幅・位相の線上分布 |
![]() (b) 位相の面上分布 |
図5 右手系での電界分布 (3.8GHz, Ez成分, Z=20mm面) |
◆入力データ(右クリック+[保存])
Metaline_M20_d1mm.omm
◆データ作成ライブラリ用ソースコード(右クリック+[保存])
Metaline.c
(2) 2線メタラインアンテナ
図6にアンテナ形状を示します。
メタラインを2本平行に並べ、給電点と終端抵抗(50Ω)を交互に配置します。
給電点の位相は互いに逆相とします。
上記ツールにεr=2.6,W=8.8mm,H=3.2mm
を代入するとZ0=50.395Ω、εr,eff=2.1715となります。
従ってスケール因子K=1.473です。
スケール後の基板厚さはH'=4.71mm、線路幅はW'=23.10mmです。線路中心間の距離を30mmとしています。
図7に反射係数を示します。
原因はわかりませんが、3.2GHz以上ではモードが変わり電流が流れなくなります。
図8に各周波数でのXZ面の放射パターンを示します。
ビームの中心は正面方向(+Z方向)になります。
(d)3.2GHzでは放射パターンが変わります。
図9に正面方向の利得の周波数特性を示します。
同様に3.2GHz以上で大幅に低下します。
図6 アンテナ形状 (図の使い方は4.4参照)
図7 反射係数 (2-4GHz, Z0=50Ω)
![]() (a) 2.6GHz |
![]() (b) 2.8GHz |
![]() (c) 3.0GHz |
![]() (d) 3.2GHz |
図8 放射パターン (XZ面) |
図9 利得の周波数特性 (2-4GHz, θ=0度)
◆入力データ(右クリック+[保存])
Metaline2_M10_d1.6mm.omm
◆データ作成ライブラリ用ソースコード(右クリック+[保存])
Metaline2.c