OpenRTMではGUIプログラムを使用して、データ入力、計算、図形出力を行います。
GUIプログラムを起動するにはエクスプローラーでOpenRTM.exeファイルをダブルクリックしてください。(図3-1-1)
図3-1-1 OpenRTMのGUIプログラム
■ .NET Framework
GUIプログラムの実行には .NET Framework が必要です。
(Windows11には標準装備されています)
.NET Framework がインストールされていないかバージョンが古くて実行できないときは、
下記から最新版をダウンロードしてインストールしてください。
https://dotnet.microsoft.com/ja-jp/download/dotnet-framework
図3-1-2に処理の流れを示します。
図中の緑色がGUI画面での操作、黄色がコマンドボタン、
無色が出力されるファイルを表します。
図3-1-2 処理の流れ
以下の手順で操作してください。
(注1)
作業中にときどき安全のために[ファイル]>[上書き保存]または[名前を付けて保存]でファイルを保存してください。
(注2)
このウィンドウの属性は左上のアイコンをクリックして[プロパティ]メニューで変更することができます。
特に[オプション]タブの[簡易編集モード]はOFFにしてください。
これを行わないと計算中にウィンドウ内をクリックすると計算が停止します。
その他、ウィンドウサイズ、色、フォントなどを変更することができます。
(注3) EEM-RTM
[ファイル]>[開く]で[ファイル名]のフィルターに"EEM-RTM"を選択すると、
EEM-RTMのデータ(拡張子.rtm)を開くことができます。
ただし、アンテナや計算条件は仕様が変わっているために変換していません。
OpenRTMで修正の上、計算してください。
[全般]タブ(図3-1-1)では各種のデータを入力します。
●[タイトル]
データの説明を適当に記入してください(日本語可)(注1)
●[直接法]
・[直接波]、[1回反射波]、[1回折波]、[1回透過波]:計算する成分をONにしてください。
[回折波簡易計算]をONにすると計算精度をあまり落とさずに回折波の計算時間を約半分にすることができます。
●[レイローンチング法]
・[最大反射回数]:多重反射波の反射回数の最大数です。
計算対象に応じて適当に設定してください。
計算時間はこの数字に比例します。
多重反射波を計算するには[直接法]の[1回反射波]をONにして、
[最大反射回数]に2以上を入力してください。(注2)
・[緯度方向分割数]:送信点から放射されるレイの角度分割数、例えば180とすると1度間隔です。
計算時間はこの数字の2乗に比例します。
計算対象に応じて適当に設定してください。必要以上に大きくしても計算結果は変わりません。
・[レイ表示3D]:送信点から放射されたレイが壁に反射される様子が図2-3-2のように3D表示されます。
レイローンチング法の前処理に相当します。(注3)
●[その他]
・[周波数]:単位GHz
・[伝搬経路最大数]:一つの受信点に到達する伝搬経路の最大数です。
使用メモリーはこの数字に比例するので必要以上に大きくしないでください。
ただし標準出力で伝搬経路数が上限に達していたら大きくしてください。
●[数値出力]
・[field.log],[path.log]:ONにすると計算終了時に出力されます。
詳しくは3.3を参考にしてください。
(注1)
日本語を含む入力データファイルの文字コードはUTF-8(BOMなし)です。
ただし、タイトルに日本語が含まれると計算時のコンソールのタイトル行が文字化けしますが、
ort.logと図形表示には日本語が正しく表示されます。
(コンソールはShift-JISのみをサポートするため)
(注2)
[1回反射波]がOFFのときは1回反射波もレイローンチング法で計算されます。
[1回反射波]をOFFにし[最大反射回数]を0にすると反射波は計算されません。
(注3)
物体形状と送信点を入力したとき図形表示されます。
[1回反射波]がONのときは[最大反射回数]が2以上、
[1回反射波]がOFFのときは[最大反射回数]が1以上であることが必要です。
[物性値]タブ(図3-1-3)では[物体形状]タブで指定する物性値のリストを作成します。
上から順に左端の番号をONにし、[種別]を選択して下記のパラメーターを入力してください。
(1) [数値入力、厚さなし]:比誘電率、導電率[S/m]
(2) [数値入力、厚さあり]:比誘電率、導電率[S/m]、厚さ[m]
(3) [ファイル]:反射係数と透過係数の入射角特性からなるファイル名(注1)
[コメント]は計算に使用しませんが、材質の説明に使用してください。
[plot]ボタンをクリックするとその行のデータの反射係数と透過係数の入射角特性が下にプロットされます。(注2)
(注1)
フォルダ名は不要です。フォルダはOpenRTM/data/material固定です。
ファイルの書式は3.1.12の通りです。
(注2)
(1)のときは反射係数のみプロットされます。
さらにそのときは[全般]タブで[透過波]を指定してもその材質の透過波は計算されません。
図3-1-3 物性値タブ
[アンテナ]タブ(図3-1-4)では[物体形状]タブで指定するアンテナのリストを作成します。
上から順に左端の番号をONにし、[種別]を選択して下記のパラメーターを入力してください。
(1) [無指向性]:比誘電率、導電率[S/m]
(2) [ダイポール]:偏波、中心軸のθ[度]、中心軸のφ[度]、ビーム幅[度]
(3) [ビーム]:偏波、中心軸のθ[度]、中心軸のφ[度]、θ方向のビーム幅[度]、φ方向のビーム幅[度]
(4) [ファイル]:全方向のアンテナ指向性からなるファイル名(注1)
[ビーム幅]とは中心から-3dBの両側半値角です。
[コメント]は計算に使用しませんが、アンテナの説明に使用してください。
[plot]ボタンをクリックするとその行のデータの全方向の指向性が左下にプロットされます。
マウスドラッグで視点を変えることができます。
[視点]または[X][Y][Z]で視点を変えることもできます。
[θ分割数]はθ方向の角度分割数です。例えば36とすると5度間隔になります。
[利得]にアンテナの指向性利得が表示されます。
(注1)
フォルダ名は不要です。フォルダはOpenRTM/data/antenna固定です。
ファイルの書式は3.1.13の通りです。
図3-1-4 アンテナタブ
[物体形状]タブ(図3-1-5)では物体形状と送受信データを入力します。
入力対象は以下の6種類に分類されます(図3-1-6)。
(1) 多角柱:断面が多角形で高さを持つ形状です。主に建物の入力に用います。
(2) 多角形:厚さを持たない多角形です。主に地面、床、天井の入力に用います。
(3) 送信点:送信アンテナを置く点です。
(4) 観測点:受信アンテナの位置を点で表したものです。
(5) 観測線:受信アンテナの位置を線で表したものです。分割数により多数の受信点を表すことができます。
(6) 観測面:受信アンテナの位置を面で表したものです。2方向の分割数により多数の受信点を表すことができます。
それぞれ任意個数の入力が可能です。
(1)(2)で物体形状を表現し、(3)~(6)で送受信を表現します。
[モード]
現在のモードです。
●[入力]:右の領域内でマウスで座標を入力します。データの編集はできません。
●[編集]:入力したデータを編集します。
[入力/編集対象]
6種類から選択したものが現在の入力と編集の対象になります。
マウス操作
右の領域内でのマウスの機能はモードで異なります。
●入力モード:左クリックで座標を入力します。
多角柱と多角形のときは最後の頂点は右クリックしてください。
その他の対象の左クリック回数は送信点と観測点は1回、観測線は2回、観測面は4回です。
マウスホイールによって拡大・縮小することができます。
●編集モード:選択した対象の任意のデータの線分を右クリックするとそのデータを編集または削除することができます。
マウス左ドラッグによって平行移動、
マウスホイールによって拡大・縮小することができます。
[編集]
編集モードでは選択した対象の指定したデータ番号のデータを編集することができます。
データを指定するには以下の2通りがあります。
(1) [データ番号]を指定して[編集]ボタンをクリックする
(2) 右の領域で線分を右クリックして[編集]をクリックする
このとき選択対象に応じて図3-1-7の編集ウィンドウが開きます。
ここでデータを入力または修正して[OK]をクリックするとそのデータが定義済みになり図中で太線で表示されます。
定義済みのデータのみが計算に使用されます。
図中に定義済みのデータ数と入力されただけのデータ数が表示されます。
この数値が一致するとき入力されたデータがすべて定義されたことを表します。
[削除]
編集モードでは選択した対象の指定したデータ番号のデータを削除することができます。
データを指定するには以下の2通りがあります。
(1) [データ番号]を指定して[削除]ボタンをクリックする
(2) 右の領域で線分を右クリックして[削除]をクリックする
[全編集]、[全削除]
編集モードでは選択した対象のすべてのデータを一括して編集または削除することができます。
[全編集」のときは図3-1-7から全部に共通するデータのみを編集することができます。
[表示]
各ボタンをクリックすることによって、右の領域のスケールを、初期化・拡大・縮小することができます。
[データ番号表示]をONにすると選択された対象のすべてのデータ番号が中心に表示されます。
さらに頂点を持つ多角柱、多角形、観測線、観測面のときは指定されたデータの頂点番号が表示されます。
[形状表示3D]ボタンをクリックすると入力されたデータが図3-1-8のように3D表示されます。
ただし、属性が定義されたものに限ります。
図3-1-5 物体形状タブ
図3-1-6 物体形状の種類
![]() (a)多角柱 | ![]() (b)多角形 |
![]() (c)送信点 | ![]() (d)観測点 |
![]() (e)観測線 | ![]() (f)観測面 |
図3-1-7 編集ウィンドウ |
図3-1-8 形状表示3D
[ポスト処理制御]タブではポスト処理の各種設定を行います。
計算終了後、ポスト処理の各種設定を行った後、[ポスト処理]ボタンをクリックしてください。
その後、[図形表示2D]または[図形表示3D]ボタンをクリックすると図形表示されます。
ポスト処理制御は、[観測点]、[観測線]、[観測面]の3つからなります。
データが入力されており、かつ選択されたものが図形表示されます。
"(2D)","(3D)"と書かれたものはそれぞれ[図形表示2D]、[図形表示3D]で図形表示されます。
図形出力については3.2を参考にしてください。
図3-1-9 ポスト処理制御タブ
[全般]タブから[物体形状]タブまでのデータを入力した後、
[計算]ボタンをクリックすると計算が開始されます。
ウィンドウが開き、リスト3-1-1のように表示されます。
ここで入力データと計算結果を確認してください。
リスト3-1-1 標準出力
<<< OpenRTM Ver.1.0.0 >>> プログラムのタイトルとバージョン Sun Oct 29 15:24:10 2023 開始日時 Title = テスト タイトル No. of threads = 16 スレッド数 No. of materials = 5 物性値の数 No. of antennas = 2 アンテナの数 No. of triangles, edges = 50, 52 物体形状、三角形と稜線の数 No. of Txs = 1 送信点の数 No. of Rx data = 1 + 1 + 1 = 3 観測点、観測線、観測面の数 No. of Rxs (0d+1d+2d) = 1 + 300 + 10000 = 10301 観測点、観測線、観測面の受信点の数とその和 Frequency [Hz] = 5.000e+09 周波数 Path : direct D T = 1 1 1 計算する成分(0/1):直接波、回折波、透過波 Max reflection times = 3 最大反射回数 No. of launched rays = 10360 送信点から放射されるレイの数 Memory size [MB] = 2 + 80 = 82 使用メモリー(レイ+受信点=合計) Total, average paths = 20341, 1.975 伝搬経路の数、合計と受信点当たりの平均数 Max paths to a Rx-point = 11 (30) 伝搬経路の最大数(上限) Average of Rx power = -75.048, -75.053 [dBW] 受信電力の平均、位相差あり/なし === output files === ort.log, ort.out 出力されたファイル === normal end === 正常終了 Sun Oct 29 15:24:10 2023 終了日時 === cpu time [sec] === 以下、計算時間の内訳 part-1 : 0.027 前処理(主にレイローンチング法の前処理) part-2 : 0.174 計算本体 part-3 : 0.014 後処理(ファイル出力等) ------------------ total : 0.215 合計
[ツール]>[オプション]メニューをクリックするとオプションウィンドウが開きます。
それぞれの意味については[ヘルプ]を参考にしてください。
設定を初期化するには[初期化]をクリックしてください。
図3-1-10 オプションウィンドウ
[数値出力]メニューをクリックすると、
それぞれの数値出力ファイルを読み込んでテキストエディタが開きます。
それぞれのファイルの意味は3.3を参考にしてください。
リスト3-1-2に物性値データファイルの一例を示します。
各行は以下の9個の数値から成ります。
・データの間には1個以上の空白を置いてください。
・角度は小さい順に入力してください。等間隔でなくても構いません。中間の角度は補間されます。
・V(Vertical:垂直)偏波はP(Parallel)偏波、H(Horizontal:水平)偏波はS(Senkrecht)偏波と呼ぶこともあります。
・反射係数と透過係数の次元は電圧です。
リスト3-1-2 物性値データファイルの一例
0 -0.2302 0.1583 -0.2302 0.1583 -0.2844 -0.0041 -0.2844 -0.0041 2 -0.2300 0.1583 -0.2304 0.1584 -0.2843 -0.0043 -0.2843 -0.0043 4 -0.2293 0.1583 -0.2309 0.1587 -0.2842 -0.0048 -0.2840 -0.0050 6 -0.2283 0.1582 -0.2319 0.1591 -0.2839 -0.0057 -0.2835 -0.0062 8 -0.2268 0.1581 -0.2333 0.1598 -0.2835 -0.0069 -0.2827 -0.0078 10 -0.2248 0.1580 -0.2350 0.1606 -0.2829 -0.0085 -0.2818 -0.0099 (中略) 86 0.7640 0.0281 -0.9184 0.0533 -0.0827 -0.0368 -0.0193 -0.0349 88 0.8738 0.0149 -0.9588 0.0280 -0.0469 -0.0203 -0.0095 -0.0185 90 1.0000 0.0000 -1.0000 0.0000 -0.0000 -0.0000 -0.0000 -0.0000
リスト3-1-3にアンテナデータファイルの一例を示します。
全方向の指向性を表します。
最初に2行のコメント(任意の文字列)を置いた後、データ本体を入力します。
データの各行は以下の14個の数値から成ります。
・θは0~180度を等間隔に分割してください。
・φは0~360度を等間隔に分割してください。
・本ファイルは、OpenFDTD, OpenTHFD, OpenMOMにおいて、
[遠方界全方向]を指定したときに出力されるファイルfar2d.logと同じものです。
・OpenRTMが使用するデータは6.7.8.9.のみです。
リスト3-1-3 アンテナデータファイルの一例
frequency[Hz] = 3.000e+09 No. No. theta[deg] phi[deg] E-abs[dB] E-theta[dB] E-theta[deg] E-phi[dB] E-phi[deg] E-major[dB] E-minor[dB] E-RHCP[dB] E-LHCP[dB] AxialRatio[dB] 0 0 0.0 0.0 -240.0000 -240.0000 0.0000 -240.0000 0.0000 -240.0000 -240.0000 -240.0000 -240.0000 0.0000 0 1 0.0 10.0 -240.0000 -240.0000 0.0000 -240.0000 0.0000 -240.0000 -240.0000 -240.0000 -240.0000 0.0000 0 2 0.0 20.0 -240.0000 -240.0000 0.0000 -240.0000 0.0000 -240.0000 -240.0000 -240.0000 -240.0000 0.0000 0 3 0.0 30.0 -240.0000 -240.0000 0.0000 -240.0000 0.0000 -240.0000 -240.0000 -240.0000 -240.0000 0.0000 (中略) 18 34 180.0 340.0 -240.0000 -240.0000 50.0521 -240.0000 0.0000 -240.0000 -240.0000 -240.0000 -240.0000 0.0000 18 35 180.0 350.0 -240.0000 -240.0000 50.0521 -240.0000 0.0000 -240.0000 -240.0000 -240.0000 -240.0000 0.0000 18 36 180.0 360.0 -240.0000 -240.0000 50.0521 -240.0000 0.0000 -240.0000 -240.0000 -240.0000 -240.0000 0.0000