図4-4-1のように2枚の壁にはさまれた空間を考え、
手前に送信点、向こうに受信点をとります。
壁による多重反射のために、図のような伝搬経路が存在します。
赤は直接波、青は1回反射波、緑は2回反射波、橙は3回反射波、水は4回以上反射波です。
ここで、最大反射回数を6回としているので、伝搬経路は、直接波以外に、
両側に対称に6本ずつ、計13本存在します。
図4-4-1 多重反射の伝搬経路
次に、送信アンテナと受信アンテナの偏波特性を変えたときの遅延プロファイルを計算します。
壁の物性値は完全導体(PEC)と誘電体の2通りを考えます。
図4-4-2は送信アンテナと受信アンテナの両方を垂直偏波または水平偏波としたものです。
以下、図中の数字は反射回数を表します。また、横軸と縦軸は共通です。
右の誘電体では壁に反射する毎に減衰するので遅延プロファイルの減衰度が大きくなります。
図4-4-2 垂直・垂直または水平・水平偏波の遅延プロファイル(左:完全導体、右:誘電体)
図4-4-3は送信アンテナと受信アンテナの偏波を直交させたものです。
この場合、受信電力はゼロになります。
図4-4-4は送信アンテナと受信アンテナの偏波を同じ回転方向の円偏波としたものです。
図4-4-5は送信アンテナと受信アンテナの偏波を反対の回転方向の円偏波としたものです。
完全導体を反射すると円偏波の回転方向が反転するので、
図4-4-4左では偶数回反射波のみが観測され、
図4-4-5左では奇数回反射波のみが観測されます。
図4-4-4右と図4-4-5右の誘電体では反射波は楕円偏波となるためにこの傾向は弱まります。
図4-4-3 垂直・水平または水平・垂直偏波の遅延プロファイル(左:完全導体、右:誘電体)
図4-4-4 右旋・右旋または左旋・左旋円偏波の遅延プロファイル(左:完全導体、右:誘電体)
図4-4-5 右旋・左旋または左旋・右旋円偏波の遅延プロファイル(左:完全導体、右:誘電体)