目次

5. 地理情報システムの利用

5.1 地理情報システム

5.1.1 地理情報システム

OpenRTMにおいて市街地の電波伝搬を計算するには多くの建物の形状を入力する必要がありますが、 これらを手で入力することは実用的ではありません。
また、地面に傾斜があるときはその影響も考慮する必要があります。
そこで公開されている地理情報システム(GIS)を利用することを考えます。
ここでは、国土地理院の"基盤地図情報"(以下GSI) と国土交通省の3D都市モデル"PLATEAU"(以下PLATEAU)を考えます。
これらから建物形状データと地面の標高データを取得します。
OpenRTMにはこれらのデータをOpenRTMデータに変換するツールGML2ort.exeが付属しています。

5.1.2 地図の単位

表5-1-1に日本の標準地域メッシュを示します。
一次メッシュの識別番号の最初の2桁は緯度方向の通し番号、 次の2桁は経度方向の通し番号です。
一次メッシュを8X8に分割したものが二次メッシュです。 二次メッシュの5桁目が緯度方向の番号(0...7)、6桁目が経度方向の番号(0...7)です。
二次メッシュを10X10に分割したものが三次メッシュです。 三次メッシュの7桁目が緯度方向の番号(0...9)、8桁目が経度方向の番号(0...9)です。

表5-1-1 日本の標準地域メッシュ
メッシュ緯度範囲経度範囲1辺の長さ識別番号例地図名
一次メッシュ40分(2/3度)1度約80km533920万図
二次メッシュ5分(1/12度)7.5分(1/8度)約10km5339-452万5千図
三次メッシュ30秒(1/120度)45秒(1/80度)約1km5339-45-11都市計画基本図


図5-1-1 地図メッシュ(一次メッシュ、二次メッシュ、三次メッシュ)

5.1.3 GSIとPLATEAUの比較

表5-1-2にGSIとPLATEAUの比較を示します。 大きな違いに色をつけています。
GSIは全国をカバーしていますが、PLATEAUは一部の都市のみです。
建物の高さについては、GSIにはありませんが、PLATEAUにはあります。

表5-1-2 GSIとPLATEAUの比較
GSI
国土地理院 基盤地図情報
PLATEAU
国土交通省 3D都市モデル
提供範囲全国127都市(2022年度)、自治体単位
ユーザ登録必要(無料)不要
建物データ単位二次メッシュ三次メッシュ
建物データ断面多角形、緯度・経度3D多角形、緯度・経度・標高
地面データ単位二次メッシュ/三次メッシュ二次メッシュ
地面データ10m/5mメッシュ標高不均一3D三角形、緯度・経度・標高
データ型式XMLXML

以上から、PLATEAU対応エリアであるかどうかで必要なデータは以下のようになります。

表5-1-3 必要なデータ
PLATEAU対応建物データ地面データ地図メッシュ
ありPLATEAU(高さあり)GSI 5m三次メッシュ
なしGSI(高さなし)GSI 10m二次メッシュ
用語:
GIS (Geographic Information System) : 地理情報システム
GML (Geography Markup Language) : 地理情報データの国際規格 ISO 19136
CityGML : 3D都市モデル用のGML(XML型式)
DEM (Digital Elevation Model) : 数値標高モデル