人体の形状と組織名をデジタル化したものを数値ファントムと呼びます。
[4]のサイトからMATLABのソースコードとともに数値ファントムをダウンロードすることができます。
乳房を外径50mm(厚さ1mm)の半球状のセラミック容器に隙間なく置いた状態でMRIで測定し、
その画像の輝度から組織名を同定したものです。
データ領域の大きさは100mm×100mm×50mmです。
分解能は1mmです。従ってボクセルの体積は1mm3、
総ボクセル数は500000です。
3名のがん患者のデータから成ります。
ファイル名は順に、
mediumLabelList_Reso1mm_Case1.txt~mediumLabelList_Reso1mm_Case3.txt
ですが、ここでは簡単にcase1~case3と呼びます。
数値ファントムのデータは組織番号である整数の並びです。
組織番号と組織名、および各ファイルのボクセル数は表2-1の通りです。
組織番号 | 組織名 | case1 | case2 | case3 |
---|---|---|---|---|
0 | 背景 | 250151 | 250151 | 250151 |
1 | 脂肪 | 192970 | 177097 | 178534 |
2 | 乳腺 | 24291 | 39234 | 41562 |
3 | 容器 | 29113 | 29113 | 29113 |
4 | がん | 3475 | 4405 | 640 |
5 | 皮膚 | 0 | 0 | 0 |
合計 | 500000 | 500000 | 500000 |
乳房の各組織の電気定数については[1]に詳しく説明されていますが、
ここでは周波数は2GHz帯とし、
比誘電率εrと導電率σとして[1]の表2.6の値を使用します。
その値は表2-2の通りです。
表2-2から以下のことがわかります。
組織名 | 比誘電率εr | 導電率σ[S/m] |
---|---|---|
脂肪 | 6.5 | 0.2 |
乳腺 | 40 | 1.0 |
がん | 54 | 1.3 |
なお、複素比誘電率と比誘電率、導電率の関係は以下の通りです。
(2-1)
参考までに、
[5][6]のサイトから脂肪(Fat-Breast/Fat)と乳腺(Mammary gland/Gland)の比誘電率と導電率の周波数特性を取得したものが図2-1です(がんはなし)。
図中に表2-2の値も記しています。
図2-1と表2-2には少し差がありますが、目的は乳腺とがんを区別することなので、
両者の電気定数に十分な差があれば問題ありません。
ウィスコンシン大学が公開している数値ファントム[7][8]では、
脂肪と乳腺の間に中間領域(Transitional region)が設定されています。
図2-2に乳房の構造を示します。
図2-3にcase1の比誘電率の水平断面図を示します。
図中で黄色ががん、緑色が乳腺、青色が脂肪です。
図2-4にcase1の垂直断面図、図2-5,図2-6にcase2,case3の水平断面図を示します。
導電率についても同様の分布図になります。